舎路(シアトル)日記

シアトルで働く日本人プログラマの日記です。

日本とアメリカでは育児まわりの常識に色々と差があって、寝かしつけにおける「放置」派の多さも大きな差異の一つだと思う。『赤ちゃんが朝までぐっすり眠る方法』の著者は、長女を育てている最中にこの方法を少しだけ試した後に

赤ちゃんがあきらめて眠るまで苦しみと恐怖を味わわせておくなんて、あまりに残酷で、どう考えても賛成できません。

強い反対派にまわり、とりわけ寝付きの悪い四男の寝かしつけに苦労するなか、「泣かせっぱなしにする」「親が我慢して夜中になんども起きる」のどちらでもない方法を探しはじめる。

といっても、あらゆる赤ちゃんに適用できる最強の方法というのは残念ながら存在しないので

  • 望ましいと思われること
  • 避けたほうが良さそうなこと
  • 記録をつけて観察するべきこと

などをふまえて、どうやって段階的に試行錯誤していくべきか、という部分までまとめたものが、本書の内容になっている。

The No-Cry Sleep Solution という McGraw-Hill から出ている本の翻訳なので、やや翻訳書特有の回りくどさや、例示のアメリカ感は否めない。そこらへんが大丈夫なら (Joel Spolsky の著作などですでに免疫があれば) おすすめです。

育児関係の本を読んで思いだしたこと

ひさしぶりに育児関係の本を読んで、子供が赤ちゃんであるあいだはごく短期間で、親は妻と私しかいないということ、その後に、Sheryl Sandberg が『リーン・イン』の「スーパーママ神話」という章で書いていた

私たちは、仕事と家庭の間で、がんばることとくつろぐことのあいだで、誰かのための時間と自分自身のための時間のあいだで、絶えず選択せざるを得ない。親になるとは、のべつ調整し、妥協し、犠牲を払うことである。

全てをこなせるスーパーママなんて存在しないという話を思いだした。もちろんスーパーパパも存在しない。

仕事をして、技術がらみの色々を追っていると忘れがちになるけど、家族や育児のために時間を割くことを選択しているんだから、それ以外のことを昔と同じようになるのは、基本的には無理だということは忘れないようにしたい。

『リーン・イン』は「家族を優先しましょう」という紋切り型にとどまらずに

私の目標は、子供たちが幸せで、元気に成長すること。聖パトリックの日に緑のTシャツを着せるのは、そうできればいいけれど、できなくてもいい。

家族のことにも、仕事のことにも、それぞれ優先順位があって、優先順位が低いことを捨てるのは個人の判断だし、全部をこなすことは無理である、という立場で書かれているのが良い。

Misreading Chat に触発されて、Kate Starbird の Examining the Alternative Media Ecosystem through the Production of Alternative Narratives of Mass Shooting Events on Twitter を読んだ。日本語に訳すと「Twitter における銃乱射事件をめぐるオルタナティブな言説の発生を通して、オルタナティブメディアの生態系を検証する」といったところだろうか。

著者の Kate Starbird は高校時代から女子バスケットボールで活躍し、スタンフォード大学を卒業したあとには、7年間近くプロのバスケットボールとして活躍したという変わった経歴の人で、今はワシントン大学の助教授 (Assistant Professor) として、The Emerging Capacities of Mass Participation (emCOMP) Laboratory という

The Emerging Capacities of Mass Participation (emCOMP) Laboratory, directed by Assistant Professor Kate Starbird, investigates the dynamics of massive participation and interaction enabled by new and social media.

コンピュータサイエンスと社会学にまたがるような研究室を率いている。こういう学際的な研究室は何学部なんだろうと思ったら、Human Centered Design & Engineering という、これまた学部自体も学際的なところだった。

さて、今回とりあげる論文では、Twitter のストリーミング API を使って shooter, shooting, gunman といった単語をふくむものを10ヶ月のあいだ収集し、そこから false flag, crisis actor といった陰謀論に関係のある単語をふくんだものだけを抽出し、そうして集めた99,474件のツイートを色々と分析している。

なお “false flag” というのは偽旗作戦のことで、今回の文脈では要するに「やらせ」のことだ。”crisis actor” というのはそれに協力して演技する人々のことで、カタカナの「クライシスアクター」で検索すると、日本でも陰謀論系のサイトばかり引っかかって厳しい気持ちになる。日本のインターネット用語風にいうと「劇団員」みたいなものだと思ってもらえれば、当たらずしも遠からずだと思います。

Methods of Analysis

私はこういう分野の初心者なので、この章が一番興味深かった。99,474件のツイートからどうやって意味のある何かを探し出すか。

まず、著者は、ツイートにふくまれるリンクのドメインをノードとした、重みつきの無向グラフを作る。ノード間のエッジは「その二つのドメインについてツイートしているユーザーがいる」という事実を、重みはそのユーザーの数を表している。

次に、こうしてできたグラフから、YouTube のような様々なコンテンツをホストしがちなサイト、短縮 URL などを取り除き、さらにエッジの数が少ないノードや、重みの低いエッジを取りのぞく。

さらに、こうしてできたグラフの中心にある 117 ノードについて、著者は、それに言及しているツイートとリンク先の内容、そのドメインの現在のトップページ、About ページの内容などを定性的に分析する。

最後に、それらのノードを

  • 主流派メディアか、オルタナティブメディアか、ブログか、政府系か、そのほかか
  • そのドメインはオルタナティブな言説をサポートしているか、いないか、オルタナティブな言説の根拠として使われているか、無関係か
  • ドメインは伝統的なニュースか、クリック稼ぎか、陰謀論/疑似科学の布教か、強い政治的な目的があるか
  • 政治的傾向は右よりか左よりか、それ以外か

などといった軸で分類している。

Findings

ここでは、分析の結果を細かく説明してく。結構分量があるのと、そのあとの Discussion/Conclusion とかぶるところもあるので、いくつか目についたものだけを引用しておく。

一つはボットネットの存在だ。著者はデータセットの中で一番によくツイートされていた The Real Strategy について、互いにフォローしあう200ユーザーによる機械的かつ組織的なツイートを

The Real Strategy, an alternative news site with a conspiracy theory orientation, is the most tweeted domain in our dataset (by far). The temporal signature of tweets citing this domain reveals a consistent pattern of coordinated bursts of activity at regular intervals generated by 200 accounts that appear to be connected to each other (via following relationships) and coordinated through an external tool.

二番によくツイートされていた Infowars について、同じような名前で同じような作成時期の1609ユーザーによるツイートを発見し、

The InfoWars domain, an alternative news website that focuses on Alt-Right and conspiracy theory themes, was the second-most tweeted domain, but as (Figure 1) shows it was only tenuously connected to one other node. Examining tweets that referenced this domain, we noted a large number (1609) of similarly-named and -aged accounts that sent a single tweet in our collection. This activity was very likely automated, though not as sophisticated as that from The Real Strategy.

どちらも、自動化されたものだろうと推測する。

次にオルタナティブメディア間のグラフ上のつながりだ。

The graph shows a tightly connected cluster of alternative media domains (upper left)—suggesting that many users are citing multiple alternative news sites as they construct alternative narratives.

この場合、サイト間のハイパーリンクではなくて、同じユーザーが複数のオルタナティブメディアについてツイートしていることを表しているわけで、つまり、オルタナティブメディアを読んでいる人は、また他のオルタナティブメディアも読んでいることを意味している。

Underlying this convergence of themes, many of these sites aggregate news so the same articles (and authors) appear across multiple domains. For example, in our data, there are 147 tweets linking to the article about the Orlando shooting on the VeteransToday.com domain. 100 other tweets link to the same article—same text, same author— hosted on different domains.

こうした複数のオルタナティブメディアの中では同じようなネタだけに止まらず、全く同じコンテンツがそのまま流通することもあるらしい。

最後にオルタナティブメディアの政治的傾向について

The political leanings of the alternative media domains did not align well to U.S.-based notions of left (liberal) versus right (conservative). Instead, the most salient dimension was around the issue of globalism.

著者は主流派のメディアの左右の分類とはきれいに呼応しないこと、一方で反グローバリズム傾向があることを指摘する。

Discussion/Conclusion

最後は議論と結論。

著者は、オルタナティブメディアの強い政治的傾向を指摘し

We also detected strong political agendas underlying many of these stories and the domains that hosted them, coding more than half of the alternative media sites as primarily motivated by a political agenda— with the conspiracy theories serving a secondary purpose of attracting an audience and reflecting or forwarding that agenda.

これらのサイトの目的の一つがそうした政治的傾向を広めること、陰謀論は読者を惹きつける、ないし政治的傾向を反映した道具として使われていることを指摘する。

Additionally, content supporting Russian government interests was present across a majority of these domains. We hope to provide a more detailed analysis of the role of Russian government propaganda within this network in future work.

さらに、ロシア政府の利害との一致も指摘している。

また、そうした情報の摂取について、著者は Conspiracy Theories: Causes and Cures の「陰謀論を信じてしまうのは、精神的な疾患ではなくて、限られた情報源による認知の麻痺によるものなのではないか」というのをひきながら

Sunstein & Vermeule (2009) write that contrary to popular framings, belief in conspiracy theories does not imply mental illness, but is instead indicative of a “crippled epistemology” due in part to a limited number of information sources. Our research suggests this crippled epistemology may be exacerbated by the false perception of having a seemingly diverse information diet that is instead drawn from a limited number of sources.

オルタナティヴメディア間での内容の共通性が、読者にとって「様々な情報源を当たった」という間違った認識を与えてしまう可能性について指摘している。

日本の場合

最後に「これを日本でやるならどうなるか」というのをちょっと考えてみたい。

まずは最初のツイートの収集だ。政治的傾向の左右を問わず、主流からオルタナティブなメディアまでを集められて、かつ10ヶ月でそれなりのデータ量になる検索語というのは、なかなか選ぶのが難しい。最近なら「森友学園」は悪くないかもしれない。

一方で、英語に比べると日本語のツイートは十分に少ないので、あまりフィルタリングしなくとも、”lang:ja” だけでなんとかなったりするのかもしれない。

ドメインに関していうと、日本では BreitbartInfowars に匹敵するような巨大サイトはまだ無い、と思う。一方で、2チャンネルや5チャンネルのまとめサイトの存在は日本特有のものだろう。こうした違いはツイートから同じようなグラフを作るだけで明らかになるんだろうか。

また、アメリカに対するロシアのように、日本のツイートの中にも特定の国の関与を強く疑わせるものはあるんだろうか。データなしに「中韓の工作員が」なんていうと陰謀論にしかならないけれど、データからそれが浮かび上がってきたら、面白い反面だいぶ怖いだろうなと思う。

Q1 をふりかえる

Mar 21, 2018

定期的ブログ更新

わりと読まれて良かった一方で、このブログの定期更新は途絶えがちで、いまひとつ説得力にかけるものがあった。日本語で書きたいことは貯まっているので、しばらくは隔週で更新する予定でいる。

可視化

英語で書くものは可視化関係に限定していた。

買ったもの

OnePlus 5T は気に入っている。OnePlus 6 は Oppo R15 と同様に iPhone X 風の横長のノッチがつくらしく、それだったら 5T のほうが好みだなと思う。

勉強

Udacity の機械学習コースは無事に完走できて良かった。

引き続き iKnow では英語を、Duolingo では会社のチームに話せる人の多い中国語を勉強している。どちらもあまり時間はさけていない。

Q2 にむけて

自分のソフトウェアを作るというのを長らくできていなくて、悲しい話をすると出来ていた時期のほうが例外的だったのかもしれないけれど、結果として

  • 大企業でチームでソフトウェアを開発する、というのが自分にとっての「ソフトウェア開発」になりつつある
  • 自分の出来ることをオープンにみせる場所がない
  • 分散投資ができておらず、仕事の結果の、自分に対する影響力が強すぎる

いろいろよくないなと思えてきたので、なんとか自分のソフトウェア (アプリケーションでもライブラリでも) を書く時間を取るようにしたい。

先週の月曜日 (2/13) に会社で携帯電話を無くしてしまった。

その日のうちに会社の Lost & Found に報告しつつも、家に固定電話がなく、あらゆる場所に携帯電話の番号を書いている身としては、手元に電話がないのは大分こころもとない。結局、火曜日には代わりの電話として以前から気になっていた OnePlus 5T を注文していた。もし見つかったら返品すればいい。

もちろん、水曜日には電話は見つかって、金曜日には手元に2台の電話が並んでいた。

いままで使っていた Moto X は、アメリカにきたばかりのとき、2014年の10月末に買ったものだ。そろそろ寿命を迎えつつあって、OS は Android 6.0 のままだし、セキュリティアップデートは来ないし、バッテリーは突然 0% になってしまう。

それと比べると、2017年11月に発売されたばかりの OnePlus 5T は流石に良い。画面は広く、背面には指紋センサーがあり、ポートは USB-C で、一方でヘッドフォンジャックはまだ残っている。

結局 Moto X は引退させて、OnePlus 5T を使うことにした。

フォントを OnePlus Slate から Roboto にする

Settings > Font

しばらくデフォルトのフォントの OnePlus Slate を使っていたんだけど、どうやらこのフォントは CJK 統合漢字について日本語のグリフがないようで「戻」(U+623B) とかが正しく表示されない。Roboto に変更すると日本語のグリフも正しく表示できるようになる。どのグリフが選ばれるかは Settings > Languages & Input > Languages をみているみたい。

グループ SMS のために Android Messages をインストールする

No Group Text - OnePlus Forums

I am having the same problem with my OP5. I do not see the advanced settings for the OP5 messaging app. The only mms setting options are Auto-retrieve and Roaming auto retrieve. Please help.

フォーラムでも報告されているように、デフォルトの SMS クライアントはグループ SMS (複数人にあてた SMS) をグループとしてまとめて表示できない。代わりに Android Messages を SMS クライアントとしてインストールすると、きちんとグループとして表示されるようになる。

背面の指紋センサーのスワイプで通知を出し入れする

Settings > Gestures > Swipe fingerprint for notifications

ちょっと変な機能だけど、片手で持ったまま、親指を上に持っていかないで通知を出し入れ出来るのは便利。

去年にはじめた Udacity の Intro to Machine Learning をようやく終わらせた。

Udacity は Coursera のような MOOC の一種で、今は有料の Nanodegree と呼ばれるプログラムに注力しているように見えるけれど、無料のコースも色々とある。

Intro to Machine Learning のことは Machine Learning in a Year で知った。Coursera の Machine Learning に挫折したという著者が

If I could go back in time, I’d choose Udacity’s Intro to Machine Learning, as it’s easier and uses Python and Scikit Learn. This way, we would have gotten our hands dirty as soon as possible, gained confidence, and had more fun.

と Udacity のコースを紹介しているのをみて、Coursera のコースに数回挑戦しては完走せずに挫折していた私でも、これならなんとかなるかもと思って挑戦してみた。

良いところ

コース全体は Python をプログラミング言語に、scikit-learn をライブラリに、色々な機械学習のアルゴリズム (ただし深層学習以前のもの) を使ってみる、というところに重きがおかれている。

理解度は、動画の途中に挟まるクイズと、その後の「ミニプロジェクト」と呼ばれる、実際に Python でコードを書いてみるところで、ある程度わかっていないと先に進めないようになっている。とはいえどちらも難易度はそこまで高くない。

Udacity 全体の傾向なのか、このコースだけなのか、動画は数分程度の短いものが多いので、私は昼食をひっそり早めに食べて、会社で黙々とやったりもしていた。

講師が二人いて、途中でバトンタッチしながら進むのも、ちょっとしたアクセントになって良い感じだった。

良くないところ

コースは数年前に作られたものなので、Python は 2.x 系だし、Jupyter Notebook も登場しない。

また、ファイナルプロジェクトについては、動画の中では提出すれば採点されそうな雰囲気を出しているけど、フォーラムによると提出する場所はもうなく、採点はされないらしい。ここらへんは、最初にふれた Nanodegree だとチューターがつくのかもしれない。

scikit-learn も、最新バージョン向けにちょっと書き換えが必要だったりするけれど、ここはミニプロジェクトの直前に説明があったりするので、そこまでは困らなかった。