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前回 (4月とコロナウィルス) からの差分です。感染症の大流行なんて、生きているうちにあまり無いことだと思うので、しばらくは定点観測していきたい。

仕事

相変わらず自宅で働いている。3/23 に買った Herman Miller の Sayl Chair が 5/26 に届いて、仕事環境としては良い感じになった。

上の子供の機嫌が悪いときに、ラップトップだけを持ってリビングであやしながら働くこともあるけれど、基本的には、部屋に引きこもって働いている。家の近所のカフェは営業を再開しているけれど、そこで感染したら、とか考えだすと、あまり長居するのは気がすすまない。

オフィス自体は開いているし、入り口での体温測定とか色々と準備されているらしいけれど、しばらくは家で働くのが続きそう。

買い物

これも前回とあまり変わらず。QFC はカートでのセルフレジ利用が何故だか解禁されたので、最近はまたセルフレジを使っている。たまに昼食などを Uber Eats なんかで注文することもあるけど、基本的には自炊している。

Amazon でよく買っている Nishiki という米がここしばらく高くなっていて困っていたのだけど、これは元に戻ったので良かった。でもいま見てみたらまた高くなっていて不穏。

学校

上の子供のプレスクールは夏休みに入ってしまったけど、下の子供のプレスクールがはじまったり、教会やお寺をベースに日本人の人々が運営しているものがいくつかあり、Zoom はよく使っている。

英語をどうしよう、というのに関しては、上の子供には iPad を貸して Khan Academy Kids などの、いくつかアプリで遊ばせるようにしだした。タブレットの解禁や、コロナウィルスがなかったらもっと後になっていただろうと思う。親からすると楽だけど、あんまり長時間やらせるのは心が痛むので、Screen Time で時間を制限したり、さらに Time Timer を使ったりしている。

ニュース

相変わらず New York Times の Coronavirus Briefing を読んでいる。レイトショーのオープニングのモノローグのところを、朝になってから YouTube で見たりするのも、楽しいけれど、でも大統領の一挙一動を気にするのは時間の無駄なのでほどほどにしたい。

政治

CHOP / CHAZ でシアトルがまた全米でニュースになっていたのは、地元の人々と Fox News など保守系メディアの温度差も相まって、ちょっと面白かった。これについては、岩尾さんの シアトル キャピトル・ヒル抗議地区(CHOP)に行ってきました をどうぞ。私はまだ行ったことがない。

ビザの制限の話は、私はグリーンカードをとっているので今のところ大丈夫。しかしグリーンカードをとったときは「また不景気が来て、グリーンカードの援助がなくなったり、首になったりするかもしれないし」と思っていて、不景気だけは実際に来たわけだけど、それが感染症によるものになるとは思ってもいなかった。

今更になって、karino2 さんの F2戦役の思い出 シリーズを聞いた。大変面白かった。

私はこういう規模のデスマーチというのは体験したことが無くて、mixi プラットフォームは大変だったし、OpenSocial に国内3大 SNS (というのは mixi, DeNA, GREE のことです) が仕様を揃えてプラットフォーム化をする、というのは当時はなかなか大戦感があったけれど、多分携帯電話開発に比べたらだいぶ規模の小さい話なんだろうなと思う。他の会社に依存されたりはするけど、国とかは出てこないし、損害賠償とかもされていなかった、はず。少なくとも開発系のマネージャーが口にする単語ではなかった。

YRP というのは知識としては知っていて、多分これは 2ch の影響だろうと思う。

あと、村上春樹的みずほ銀行とか懐かしいですね。

こういう現場への警戒感があったのか、単なるラッキーか、私は新卒以降、バージョン管理システムがあって、コードレビューがあって、周りがソフトウェア開発にある程度の理解があって、エンジニアに気をつかう、というところでしか働いていなくて、それは良かった。まあ、2008年ならバージョン管理システムはどこでもあったと思うけれど、コードレビューは「GitHub 使うようになってからやるようになりました!」みたいな話をたまに聞くし、私もそれ以前のアルバイトしていたところではやっていなかったので、当時のミクシィはどこかに頑張った人がいたんだなあと思う。

それでも、mixi 含めた国内 SNS は、Twitter と Facebook には勝てなかった。それは Rails やネイティブ開発みたいな技術面とか、アジャイルとかスクラムのような開発手法とか、デザインとかユーザー中心設計とか、そういうところで頑張ったら勝てるかというと、そうは信じられない無力感があった。またその少し前あたりに、livedoor Reader の海外版の Fastladder とか、はてながアメリカにいくとか、Lingr とか、国内でちょっとかっこいい Web のサービスが、海外ではあんまりうまくいかずに終わる、というのが色々とあって、それも無力感を後押ししていた。

それならば国外、というか北米のソフトウェア開発というのを体験してみよう、というのは Amazon に転職した理由のひとつだったと思う。それから5年以上たって、シアトルにまで引越して、なにかがわかったかというと、まああんまりパッとした話はない。規模も仕事の種類も違うし、何よりも時代が違っていて、自分がいたころの日本の会社というのは数年前の話で、それと2020年の開発を比べても、それは会社の違いよりも、時代の及ぼす影響の方が大きいだろうと思う。

なんだか、こういう話は以前にも書いた気がするのでこのへんで終わり。国内 SNS の話は、かなりソーシャルゲームよりの修羅場だけど、六本木戦記がおすすめです。

最近 hitode909 さんが、ここ最近ドキュメントについて書いているのを読んで、

そういえば、Increment が Documentation 特集だった号 があったなあと思い出したので、読んでみた。

Increment は Stripe のやっている雑誌 (という話は2017年にも書いた)。もともとはオンライン雑誌だったのだけど、今は紙版も売っている。といっても Airbnb MagazineOffscreen のように、実際に本屋で売っていたりはしない、と思う。

一番よかったのは、Stripe の documentation manager の人の Why it’s worth it to invest in internal docs で、

  • Yes/No と自由記述のコメントで顧客満足度を調べよう
  • ドキュメント全体のうち、ちゃんとメンテナンスするものを決めて、目次をつくろう
  • 個々のドキュメントに「オーナー」を決めて、オーナーに求めることを決めよう。オーナーが退職するときは、次のオーナーにちゃんと引き継ごう
  • 昇進のときにも、コードだけではなくて、ちゃんとドキュメントを書いているかどうかを評価しよう

トップダウンでのがんばりは要求されがちだけれども、実践的で参考になる。

次点で、A primer on documentation content strategy と、Python の機械学習 NLP ライブラリのドキュメントの改善について書いた The process: Transforming spaCy’s docs も面白かった。

消化していなかった育休の残りをちゃんと使って、4月は3週間ほど仕事を休んだ。どこにもいけないので家にいるだけだけど、育休らしい時間の使いかたともいえる。

元々はこの休みは日本に帰省するのに使うつもりだったのだけど、それも延期になってしまった。

仕事

幸いなことに仕事は家からできるので、育休前は普通に働いていた。3月の最初の週には原則自宅勤務するようになっていて、ディスプレイやキーボードなどを色々と買い足した。

通勤しなくていいのは良いけれど、私は会社の中でも自席と共有スペースとを不必要に行き来する種類の人間だったので、一箇所でずっと仕事をするのはつらい。一方で、仕事の場所を決めるのは自分のモードを切り替えるのに良いのと、子供たちにとってもわかりやすいだろうから、家中を移動しながら仕事をするのもあまり気が進まない。

買い物

食料品は原則週に一回だけ、自分が買い出しにいっている。近所の QFC は、一方通行の導入やカートでのセルフレジ禁止などが順次導入されつつも、入場制限はかかっていない。毎週開店直後に行っているからかもしれない。

このまえ、野暮用で近所に行ったので Trader’s Joe をのぞいてみたら、こちらは店の前の入場制限や、ショッピングバッグの持ち込み禁止があって、ちょっと面食らった。

学校

子供のプレスクール (幼稚園みたいなもの) は毎週色々と工作の材料を送ってくれたり、ビデオ会議を毎週やってみたり、がんばっている。ただ、子供の集中力はビデオ会議だと保たれにくい。

以前と比較すると英語でコミュニケーションをとる時間が減っているので、それは少し心配。

ニュース

The New York Times

We are providing free access to the most important news and useful guidance on the coronavirus outbreak to help readers understand the pandemic.

コロナウィルス関係のニュースは無料で読めるというので、ニュースレターのうち Coronavirus Briefing だけを読んでいる。真面目に、継続的に The New York Times を読むのは今回が初めてだけど、日本の新聞よりも同世代感があって良い。言うほど日本の新聞を読みこんでいたわけでもないけれど。

以前は、これに加えて Morning Briefing も読んでいたんだけど、これはニュースの読みすぎだなと思ったのでやめた。

The New Yorker の Seattle’s Leaders Let Scientists Take the Lead. New York’s Did Not を読んだ。

アメリカでも初期のコロナウィルス症例があったシアトルは、専門家主導で感染を抑えることについて一定の成果をあげつつあるけれど、一方のニューヨークでは、衛生局と市長の不仲や、市長と知事との役割分担の不明確さなどが、初動の遅れやメッセージングの不明確さが生じてしまったのだよ、という話。

個人的に興味を引かれたのは、

The C.D.C.’s Field Epidemiology Manual, which devotes an entire chapter to communication during a health emergency, indicates that there should be a lead spokesperson whom the public gets to know—familiarity breeds trust. The spokesperson should have a “Single Overriding Health Communication Objective, or SOHCO (pronounced sock-O),” which should be repeated at the beginning and the end of any communication with the public.

CDC 1 の “Field Epidemiology Manual” (実地疫学マニュアル) の存在と、それがコミュニケーションについて一章をさいているという事実だった。このマニュアルは、オックスフォード大学出版局から出版されているけど、オンラインでも無料で公開されている。

せっかくなので、Communicating During an Outbreak or Public Health Investigation という章だけを読んでみたら、行動経済学的な、必ずしも合理的な判断をしない人々をどう動かすかという視点があって、なかなか面白い。

例えば、人々があるリスクを受け入れるか否かは、リスクが自発的なものか、自分のコントロール下にあるか、明確な利益があるか、自然に起こったものであるか、子供ではなく大人に主に影響するか、などなどの因子に影響するらしい。

あるいは、Risk Communication Messaging Tips and Examples として挙げられている

  • 共感と理解を表明する
  • 安心させすぎない
  • わからないことを認める
  • ジレンマを共有する
  • 悪い可能性を伝えておく
  • まだわからないことについて、答えを知りたいということを表明する
  • さらに、どうやってそれを調査するかを説明する
  • 聴いている人々に、何をするべきかを説明する

なんてあたりは、専門家としてなにか悪いニュースを伝えるときの、あるべきコミュニケーション方法として、考えてもいいと思う。ここまで防衛的に話すのが必須であるひとはあまりいないかもしれないけれど、安全側に倒せるなら、それに越したことはない。

ちなみに、The New Yorker が引用している SOCHO というのは、Working with the News Media に出てくる。

You often can determine the overall communication objectives by answering the following two questions:

  • “What do we want the headlines to be?” Make two short lists, one that includes the desired headlines and one that includes headlines to avoid in the messaging. Think about the supporting messages that will help prompt the desired headlines.
  • “What is the most important information for the affected population to know immediately?” Identify the action steps you want the affected population to take and weave that messaging throughout the interview or public appearance.

For most news reports, you will have only one direct quotation; therefore, make it count. Write down your primary message point, often called the Single Overriding Health Communication Objective, or SOHCO (pronounced sock-O).

「メディアの見出しになったときに、理想的なものと避けたいものを想定して、そこからどう話すかを考えよう」というのは、実用的で良い。こちらは、自分で使う機会はなさそうだけど。

オンラインで読めるリスクコミュニケーション文献

こういうコミュニケーションは、リスクコミュニケーションと分類されていて、CDC の中にも CERC Manual (Crisis and Emergency Risk Communication Manual) という別の、丸々一冊をコミュニケーションにあてたマニュアルが、WHO には Communicating Risk in Public Health Emergencies というガイドラインがある。


  1. Centers for Disease Control and Prevention はアメリカにある連邦政府管轄の感染症の研究所 ↩︎