New York Times の Trump Had One Last Story to Sell. The Wall Street Journal Wouldn’t Buy It. を読んでいたら
This fall, top media and tech executives were bracing to refight the last war — a foreign-backed hack-and-leak operation like WikiLeaks seeking to influence the election’s outcome.
WikiLeaks って今はそういう評価なんだっけ? そういえば Snowden とか WikiLeaks とか、あのあたりについてちゃんと知らないなあ、と思って『暴露―スノーデンが私に託したファイル―』『全貌ウィキリークス』『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』と立て続けに読んだ。
暴露―スノーデンが私に託したファイル―
Edward Snowden の NSA に関するリークを、それを受けとったジャーナリスト Glenn Greenwald の視点から書いた本。山形浩生の スノーデン関連書紹介 (2019) では
グリーンウォルドはその後、自分で独立メディア The Interceptをたちあげ、スノーデンのファイルを小出しにするとともに、各種の調査ジャーナリズムを実践している。
と書かれているけれど、著者は2020年のアメリカ大統領選の最中に、編集方針の違いを理由に The Intercept を離脱している。
今回に取りあげる3冊の中では、人の生い立ちではなくひとつの事件を追うという性格が強く、スノーデン自身についてはあまり掘り下げられない。また、著者はマスメディアにだいぶ批判的で、私の中には、日本のメディアよりアメリカのメディアはちゃんとしていて、フェイクニュースといっている人々のほうが危うい、という気持ちがあったのだけど、そういう単純な話でもないんだなと反省した。
全貌ウィキリークス
Julian Assange, WikiLeaks のその周辺について、子供時代から追った本。著者の Marcel Rosenbach と Holger Stark はいずれもドイツの週刊誌 Der Spiegel の人々で、それもあってか Glenn Greenwald のようなマスメディア批判はあまりない。
とっているリスクとは不釣り合いにスキの多い Julian Assange と、無編集に提供された情報を公開するだけという当初のかたちから、だんだんと編集を入れたジャーナリズムに流れていく WikiLeaks の姿は、見ているとだいぶ心配になる。
Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔
Audrey Tang について子供時代から追った本。著者の Cheng Chung Lan は nippon.com のスタッフライターで、Iris Chu も nippon.com にプロフィールがある。翻訳のようで実は日本語書き下ろし。
Audrey Tang の、知り合いの家を泊まり歩くような、ハッカー的な華々しさと自由さは Julian Assange にだいぶ似ているし、ひまわり学生運動での中立に情報の流通を促進する立場は、WikiLeaks 的だと思う。でもここから彼女は政府に登用されて中の人になる。
Audrey Tang の話は、本人の人間的な魅力にひきづられるのか、ヒーロー待望論になりがちで、私はそれは良くない (システムで解決したい) と思うんだけど、その点でいうと本書は、台湾のコロナウィルス対策について、中国起因の WHO との不仲、SARS 対策の失敗と、台湾 CDC の設立といった文脈を抑えた解説があって良かった。