舎路(シアトル)日記

シアトルで働く日本人プログラマの日記です

Cal Newport “Deek Work” の邦訳である『大事なことに集中する』を読んだ。ソーシャルメディアとかやっていないで、ちゃんと集中して「深い」仕事をしないといけませんよ、という本だというのは、まわりの人々の感想から知っていたけれど 1、読んでみたら想像以上にオフラインになることを推奨していいてびっくりした。

たとえば、5章で著者はこんな提案をする。

ネットを使うときを前もって予定に入れ、それ以外では使わない。コンピュータのそばにメモ用紙を置いておくといい。それに “次に” ネットを使う時間を書いておき、それまでには絶対に使わない。

こういったオフライン生活には、自分もちょっと馴染みがあって、2009年ごろにちょっと試したり、2010年には自宅のインターネットを解約したりしていた。こういった行動は、友達のプチ断線 (2008) に影響されていて、そこで紹介されている「遅延 HTTP」は

それでもわからないことはある. 仕方ない. 検索キーワードをテキストファイルにメモしておこう. 検索キーワードだけでなく, ダウンロードする必要のあるもの, 送るべきメールの草稿なども同じメモにまとめる. こうして “オンラインでやることリスト” ができあがる. オンラインになったら, そのメモをもとに検索をする.

著者の提案とだいぶ似ている。まさか2018年になって海の向こうで同士を見つけるとは思わなかった。

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアにも手厳しく、ツール全般に対して「メリットがあるから使う」ではなく、マイナスの影響があることを前提に、それを上回るプラスの影響が自分にあるものだけを使うべきだと指摘する。

Twitter を使わない有名作家を3人とりあげて

この三人がツイッターをしないことが正しいかいなかを議論する必要はない。彼らの業績からして自明だからだ。

なんて書いてみるのはちょっと都合のいい事例だけを引きすぎというか、第1章で成功者として取り上げた Rails の David Heinemeier Hansson が、わりと熱心に Twitter している事実とかをすっと隠すのはどうなんだろう、とは思う。著者は、本書の出版後に TEDx で Quit social media という講演もしているくらいで、ソーシャルメディアの害については熱が入っていて、それが雑さに繋がっているのかもしれない。

一方で

こうしたサービスは病みつきになるようにできている – あなたの職業上および私的な目標を後押しする取り組みから、直接、時間と注意力を奪う。

というのは、職業柄、事実であることはわかる (単位時間、たとえば一週間あたりのアクティブ率みたいなものはみんな気にしている) し、

そこにある暗黙の同意は、友人や仲間の注目を得る代わりに、あなたは彼らに気前よく注目して好意を返す、というものだ。「あなたは私の現状に “いいね!” ボタンを押し、私はあなたのそれに “いいね!” を押す」というわけだ。この同意は、多くの努力を要することなく、すべての人に自分は重要であるという幻想を与える。

これも、まあ、そういう側面はあるとは思う。こう書かれると大分グロテスクではあるけれど。

ディープワーク

じゃあどうすればディープワークできるのか、というところは、他の自己啓発本と重複することも多い。

  • 連続している、割り込みされない時間を作る
  • ディープワークをする時間を決める (時間割)
  • 毎日仕事をきちんと終了させる

あたりは、現状はあまりよく出来ていない。ヘッドフォンをつけず、ポモドーロが中断されても気にしない、は「相談されるのは良いことである」という理由で続けているんだけど、自分が深く考えた仕事を出来ているのかというと、ちょっと疑問に思うところはある。

管理業務に対する冷ややかな態度については、たくさん論文を書いて、査読されて、引用されるのが良いことである、という研究者としての著者の生活が色濃く反映されているなとも思う。

私の職業生活はもう少しゴールが曖昧で、たとえばインタビューやミーティングをやたらに断っていると昇進はできなさそうに思う。そもそも昇進はゴールなのかというと多分ちがう。会社内の評価と距離をおいた、本当の職業生活でのゴール、というものを考えたほうがいいのかもしれない。


  1. たとえば、morrita さんの 今年読んだ/聞いた本 (2016)。Rebuild でも 175: Executive Order (2017) で取り上げられている。 [return]