Acting the Part: Examining Information Operations With in #BlackLivesMatter Discourse を読んだ。著者らが、アメリカの銃乱射事件のソーシャルネットワーク上での広がりについて調べるべく集めていたデータセットから、Twitter が公開したロシアの企業 Internet Research Agency (IRA) のなりすましアカウント群のツイートを集めて、後者について論じている。
ただし、Twitter の公開した IRA アカウントが2,752個、そこから著者のデータセットに含まれていたものを選ぶと96アカウント、さらにそれを、題名のとおり Black Lives Matter 関係のハッシュタグを使っていて、リツイートでのクラスタリングでもってリベラル/保守の大きいクラスタに含まれているものを、とフィルタして29アカウントに絞っているので、IRA の活動全体を論じるというよりは、その一角だけに迫るような内容になっている。
これらのアカウントは完全に自動化されているわけではなく、中にちゃんと人がいるらしく、普通にツイートしたり、アカウント同士でやりとりしていたり、BlackMattersUS.com なんて外部のウェブサイトやポッドキャストがあったり、普通に見ているぶんには、どう考えてもバレそうにない。
また、リベラル側に混じっているアカウントはリベラル側の極端な、保守側に混じっているアカウントは保守側の極端な主張をツイートしたりリツイートする一方、両クラスタに共通して、既存のメディアへの不信感をツイートしてもしていたらしい。
Together with the high-level dynamics revealed in the network graph, this observation suggests that RU-IRA operated-accounts were enacting harsh caricatures of political partisans that may have functioned both to pull like-minded accounts closer and to push accounts from the other “side” even further away.
著者らが指摘する、IRA によって (ロシア政府によって) 操作されているアカウントが政治的な左右の両極として振る舞い、その分断を促進している、という指摘は、だいぶ不気味な話だと思う。